結婚相手は父親似か否か

私の父は根から照れ屋な性分で、姉も私も妹も褒められた経験がない。人様の前で褒めないという事ではなく、家族の中でも褒められない。そもそも妻の事も、夫婦同士でも褒め合わない。
そんな家庭に若干の寂しさを感じていた私は、もし自分が大人になって結婚したら、私は堂々と伴侶を人前でも褒めたいし、子供の事も口にして「大好きだよ」「可愛いよ」と言える親になりたいと思っていた。

一方、主人の父は家族を褒めちぎる人だ。
主人は初めての子であり、男の子至上主義だった昭和時代の事、とても大切にされたのは解る。それにしても、何かにつけ褒められている。
義父が、「お前は昔から手先の器用な子だったけど、今もお茶を淹れるのが上手だなあ」と言えば、義母は「うちの子はみんな性格も満点だしね」と言う。
そして事実、主人も主人の兄弟もみんな優しい。
そんな義理実家のメンバーにはつい心を許して、つい私も自分をさらけ出してしまう。
「こんな失敗をして」と言えば「自分の失敗・・要するに弱いところを話せるあなたは素直ね」と褒められ、子供の短所を挙げれば、全ては短所は長所へとシフトチェンジしてくれる。
例えば臆病な長女の事は「思慮深くて、観察力があるのよね。良い人生を送れるわよ」とか、何度注意してもどこ吹く風の長男に対しては、「この子は大物の素質があるぞ、将来が楽しみだ。長生きしなきゃなあ」等。
ある時、私側の実家に三姉妹とその家族で集まった事がある。
偶然にも姉も妹も私もグレーの洋服を着ていた。それを見た父が一言「何だ、お前達は。春だと言うのに揃いも揃って暗い色の服を着てセンスのカケラもないな。まるでドブネズミのようじゃないか」と。
妹が言った。「ちょっと酷くない?と言うか、将来私の旦那さん、お姉ちゃん達の旦那さんが娘に向かってドブネズミだなんて言うと思う?」と。確かに。誰も言いそうな人はいないよね。。
母が言った。「え?あなた達、まさかずっと気付いてなかったの?あなた達を落としてる時って、お父さんの最大級の愛情表現なのよ。今日は久しぶりに皆が揃って嬉しいのよ」と。
いつも悪態づき口の悪い父親が、きまり悪そうに笑っていた。そんな父を見たのは初めてで、本当に意外だった。
私の夫は子供たちを目の中に入れても痛くないという可愛がりようで、思春期真っ只中の娘は毎日「可愛い」と言われて、少し迷惑顔を浮かべている。
何となく娘の選ぶ将来の旦那さんは、私の父みたいな人かな?ぼんやりと思った。

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